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水蜜桃の願い
第4章 動き出した刻
数日後、初めてふたりで飲みに行った。
ビールや日本酒は苦手だと、カクテルやチューハイを好んで飲む彼女。
アルコールのせいなのかそうでないのか、少しだけ頬を赤らめながら俺の話を楽しそうに聞くその豊かな表情。
纏う雰囲気はいつもよりどこか甘ったるい。
二時間ほど楽しんでからふたりで駅へと帰る途中、もっと酔った姿が見られるかと思ったのに残念──そんなふうに言いながら彼女をちらりと横目で見れば、向こうも俺の方を盗み見ていたのか目が合った。
少し慌てたように、自分だって俺のそういう姿が見たかったと返してきたから、自然に頬が緩んでしまう。
いちいち言動が可愛いんだよな……素直なのに、時には何だか負けず嫌いになる。
くるくる変わるわかりやすい表情はまるで子供みたいで。
そんなふうに感じながら、なるべくゆっくりと歩いた。
並んでいたはずなのに、いつの間にかなぜか遅れている彼女をたびたび気遣いながら。