この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
水蜜桃の願い
第1章 先生と彼女
「えっと、その……少し頭が痛くて、なんか、集中できなくて」
ぽつりと口にすれば、え? と、少し慌てたような先生のその気配。
「あ、今はもうだいぶ治まってて、だから大丈夫です……!」
「……そうだったんだ。
無理しないで休んでよかったのに。
振替レッスン制度あるの知ってるよね?」
「あ……はい。次からは、そうします……」
うん、と先生は頷き、少し何か考えるようにした。
そしてその視線は不意に私を捕らえて
「早退――――」
「っ、あの……!」
言い掛けた先生のその言葉に咄嗟に反応する。
「ほんとにもう平気なんで……!」
じっと私を見ている先生のその視線を受け止めながら、そう口にしていた。
さっきは、もう帰ろうか、なんて思っていたけど。
本当は、帰りたくなんかないんだ私は――無意識のように口にしていた自分の言葉に、そう気付かされる。
やがて、先生の、心配そうに私を見ていたその表情が、ふっと緩んだ。
「……わかった。でも無理はしないでね?」
ほっとして、はい、と呟く。
それからようやく私はコーヒーを口にした。
いつもコーヒーにはミルクと砂糖を入れる私だけど、あえてそのまま飲んでみた。