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水蜜桃の願い
第1章  先生と彼女


「えっと、その……少し頭が痛くて、なんか、集中できなくて」


ぽつりと口にすれば、え? と、少し慌てたような先生のその気配。


「あ、今はもうだいぶ治まってて、だから大丈夫です……!」

「……そうだったんだ。
無理しないで休んでよかったのに。
振替レッスン制度あるの知ってるよね?」

「あ……はい。次からは、そうします……」


うん、と先生は頷き、少し何か考えるようにした。
そしてその視線は不意に私を捕らえて


「早退――――」

「っ、あの……!」


言い掛けた先生のその言葉に咄嗟に反応する。


「ほんとにもう平気なんで……!」


じっと私を見ている先生のその視線を受け止めながら、そう口にしていた。
さっきは、もう帰ろうか、なんて思っていたけど。
本当は、帰りたくなんかないんだ私は――無意識のように口にしていた自分の言葉に、そう気付かされる。

やがて、先生の、心配そうに私を見ていたその表情が、ふっと緩んだ。


「……わかった。でも無理はしないでね?」


ほっとして、はい、と呟く。
それからようやく私はコーヒーを口にした。
いつもコーヒーにはミルクと砂糖を入れる私だけど、あえてそのまま飲んでみた。


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