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水蜜桃の願い
第4章 動き出した刻
「……付き合う前なら浮気にはならないよね」
意味のない言葉で焦りを……本心を隠しながら、今から自分がしようとしていることに対し彼女に無理矢理に求めた同意。
シャツのボタンを外し始めるとようやく、我に返ったかのように起き上がる。
警戒するような怯えた視線を俺に向けながら。
──ひどい目で見るんだな。
さすがに、一瞬躊躇った。
そんなふうに見られたのは初めてだったから。
その隙を突いて、ベッドから降りた彼女。
俺の脇を通りすぎようとしたその身体に咄嗟に手を伸ばし、腕を掴む。
至近距離で目が合った。
「透子ちゃんだってそのつもりで来たんじゃないの?」
そんな言葉をぶつければ、彼女は唇を噛みながら首を振り否定する。
力一杯振り払われた手。
小走りでドアに向かう彼女のその後ろ姿が視界に入り、勝手に身体が動いていた。
帰したら彼女はあいつに奪われる──そんな感情に追いたてられるかのように後を追う。
今にもこの部屋から出ていきそうな彼女を、ドアについた両手で作った檻の中に、駄目、と言いながら閉じ込めた。
びくっ、とその身体が揺れる。
「帰さない」
耳元にそう告げた。
それでも彼女は首を振り、お願い先生──と俺に解放を乞う。