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水蜜桃の願い
第1章  先生と彼女


『……この前の休みの日、買い物に行ったんです』


そう、英語で私は先生に話しかけていた。

先生の表情が、少し驚いたようなそれになり。
すぐに、笑顔へと変わった。
私の方に身を乗り出すように、椅子に座り直す。


『友達とふたりで』


頷き、先を促される。


『食事をして、映画を見て――――』

『どんな映画?』

『……っと、恋愛ものです』

『面白かった?』


その問いに頷き、その続きを少し躊躇えば。
続けて? と言わんばかりの態度で、先生が笑う。

爽やかな、あの笑顔で。
きっと、私以外にも。生徒みんなに向けているのであろう、その笑顔で。

……そうして思い出したのは、あの笑みだった。
隣を歩く彼女へと向けられた、静かな微笑み。



『……私、先生を見ました』



――いつのまにか、そう、口にしていた。



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