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水蜜桃の願い
第4章 動き出した刻
興奮が収まった俺は、思い出していた。
彼女を惑わせたあの男のことを。
最中には忘れていたのに、終わった今、その感情が再び込み上げる。
「……返事、どうするの」
曖昧にされたままだった俺のその問い。
ただ、聞きたかった。
その答えを。
彼女の気持ちを。
え……と、戸惑っているかのようなその表情に、同じ問いをただ、繰り返す。
それでもまだ、通じなくて。
あいつと付き合うのかとはっきり口にしたとき、ようやくその首が微かに左右に動いた。
──だったら。
衝動のままに、彼女の耳元で囁いた。
次の約束を。
顔を離すと、彼女の視線はついてきて。
俺を見つめながらゆっくりと頷く。
はあ……と小さく吐かれた息。
黙って見つめ返す。
やがてその瞼は次第に閉じられていった。
ゆっくりと。
それはまるで、眠りに囚われていくかのようで────。