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水蜜桃の願い
第4章 動き出した刻
バスルームを出てベッドの方を見ると、彼女はとろんとした目を俺に向けてきた。
合った視線をすっと逸らし、床に散らばったままの彼女の服を拾い上げて渡す。
それから、自分の服を拾い、身に付けた。
「……先生……?」
声さえもまだ、とろみを帯びている。
「ん?」
彼女を見ずに、言葉だけを返す。
手早く身なりを整え
「ホテル代は払っておくから、透子ちゃんは泊まっていっていいよ」
そう口にすれば、え……と戸惑いの、その声。
「……私は、って……え? 先生は……?」
「俺は帰るよ」
またそのうち連絡するから──そう続けると、少し慌てたように彼女は言った。
「え、でも、私……先生に話が────」
「ごめん。今度聞く」
それを、そんな言葉で切る。
え……とまた、彼女が声を漏らすのがわかったけど、俺は
「じゃあ」
そう、有無を言わせずに会話を終わらせた。
彼女ももう何も言わない。
ただ、視線だけを俺に向けているのはわかる。
鞄を手にし、そのまま、彼女の方は見ずに部屋を出た。
後ろ手に閉めたドア──同時に吐いた、深い溜め息。