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水蜜桃の願い
第4章 動き出した刻
前までは、入れた連絡に「もう行かない」という返事がくればいいと思っていた。
けれど今は「行きます」という返事に、ほっとする自分がいる。
ホテルの部屋でひとり思っていた、このまま来なければいい──そんな思いが、ちゃんと来るだろうかという気持ちになりつつあるのも自覚していた。
早くこんな俺を嫌いになればいい、と思いながら彼女を抱いていた時間が、もはや手放したくないものになっていることも。
そう──彼女を抱けば抱くほど、その想いは募る一方で。
このままできれば、ずっと──そんなふうに思ってしまっている自分に気づき、はっとする……といったようなことが多くなった。
そして決まって陥る、自己嫌悪。
嫌われたかったはずだ。
彼女が自分から去っていけるよう、俺に気持ちを残さずにいけるよう──そう、だからこそのひどい扱い、ひどい言葉だった。
この数か月、そうやって彼女に接してきた。
それを今さら?
今さら手放したくないとか──どう考えても勝手すぎるだろ、と自分という人間に心底呆れる。
呆れるけど、でも、それは本音で。