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水蜜桃の願い
第4章  動き出した刻


自分の中に渦巻いている感情があまりにも複雑すぎて、コントロールするのが難しい。
矛盾し始めている、感情と言動。
それに気づきながらも、始めてしまった以上後戻りもできない。

こんな自分を、俺は知らない。
自分の感情が手に負えないなんて、そんなこと今まで一度もなかった。
彼女だけだ。
彼女のことになると、俺は、もう────。


……苦しい。


口づけないと決めていたのに、無意識に重ねそうになる唇。
寸前でとどめたこともある。
想いのままに口づけ、そのすべてを俺だけのものにしてしまえたらと何度も思った。

終わっても、もっと、とねだる彼女。
気を失うまで求められ続けたこともある。
今はもう、彼女にとって俺はセックスだけの相手になっているのか──そんなふうに思うことも度々だった。
自分から始めたその関係なのに、そう思われるのは面白くないのかと、考えても答えなんて出やしない問いばかりを何度も……いくつも、自分に繰り返す日々が、もうずっと続いていた。



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