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水蜜桃の願い
第4章 動き出した刻
──けれど、その日は突然訪れた。
いつものように彼女を抱き、終わった後浴びたシャワー。
部屋に戻り、ベッドに横たわったままの彼女に背を向け身支度を整える。
……静かな時間。
彼女は今日は何も言わない。
寝てしまったのかとちらりと視線を向けた。
けれど起きていて、目と目が合った瞬間、はっと我に返ったかのように彼女は瞬きを何度か繰り返す。
そして、え……と何かに戸惑っているかのような表情になり、指先で目を拭うようにした。
やだもう……とその唇から、言葉が発せられ、口元にぎこちない笑みを浮かべながら、何度も目を拭う。
──え……。
もしかして泣いてんの? と、その姿から目が離せなくなった。
やがてその笑みは崩れ、焦ったように毛布を頭まで引っ張りあげる彼女。
その表情は見えなくなっても、小さく揺れる身体が、その気持ちを物語っていた。
──俺は、なんて。
その姿で、ようやく。
……ようやく俺は、自分の浅はかさを知った。
──俺はなんてひどいことを。
ぎりっ、と噛んだ唇。
彼女から見られていないのをいいことに、歪んでいく顔をどうにもできずにただ、彼女の姿から目を逸らし、俯いた。