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水蜜桃の願い
第4章  動き出した刻


「……じゃあ、そういうことで」


服を着終えて、振り向きながらそう口にした時──掴まれた、腕。


「やだ……」


同時に、とうとう声が。
いや……そう続けられた言葉は掠れていて、俺を見つめたまま首を振るその顔にもはや笑みはない。


「なんで……先生……」


落ち着きなく揺れる瞳。


「……飽きたの?」


そして、はっとしたようにそう、呟く。
は……と、思わず俺の口からも息が漏れた。
そんなことあるわけない。
飽きるなんて……俺が、彼女にそんなふうに思うなんて。


「そんなんじゃないよ」


その感情を隠しながら、そう返せば


「じゃあどういうこと……!?」


間髪置かずに問われ、ねえ……先生! と、必死さを纏った表情で俺を見つめてくる。
大きく開かれた瞳がみるみるうちに潤んできた。
その感情に引きずり込まれる前にここを出なければと、何も答えず、彼女が掴んでいる俺の腕を解くようにする。
力を入れると呆気なく、彼女は手を離した。
自由になった腕が少し……寒い。

襲ってきたそんな感傷的な気持ちを振り払い、じゃあ──と、ドアに向かおうと歩き出す。


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