この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
水蜜桃の願い
第4章 動き出した刻
「……じゃあ、そういうことで」
服を着終えて、振り向きながらそう口にした時──掴まれた、腕。
「やだ……」
同時に、とうとう声が。
いや……そう続けられた言葉は掠れていて、俺を見つめたまま首を振るその顔にもはや笑みはない。
「なんで……先生……」
落ち着きなく揺れる瞳。
「……飽きたの?」
そして、はっとしたようにそう、呟く。
は……と、思わず俺の口からも息が漏れた。
そんなことあるわけない。
飽きるなんて……俺が、彼女にそんなふうに思うなんて。
「そんなんじゃないよ」
その感情を隠しながら、そう返せば
「じゃあどういうこと……!?」
間髪置かずに問われ、ねえ……先生! と、必死さを纏った表情で俺を見つめてくる。
大きく開かれた瞳がみるみるうちに潤んできた。
その感情に引きずり込まれる前にここを出なければと、何も答えず、彼女が掴んでいる俺の腕を解くようにする。
力を入れると呆気なく、彼女は手を離した。
自由になった腕が少し……寒い。
襲ってきたそんな感傷的な気持ちを振り払い、じゃあ──と、ドアに向かおうと歩き出す。