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水蜜桃の願い
第4章 動き出した刻
その日も、翌日も、何もなく終わった。
もちろんそれは、彼女からの連絡という意味でだけで、俺の心もそんなふうに……というわけにはもちろんいかなかった。
……ずっと、彼女のことが頭から離れない。
姿。
声。
仕草。
笑顔。
泣き顔。
それらすべてが、容易に思い出せた。
別れ際の彼女。
傷つけてしまったその心。
後悔しながらも、これでいいんだと。こうすることが一番よかったんだと何度も自分に言い聞かせた。
今は苦しくても、きっといつか傷は癒えるだろう。
俺と一緒にいれば深まっていくだけであろうその傷は、そう──離れることで少しずつ、塞がっていくに違いない。
せめてそう、思いたかった。
こんな関係に引きずり込み、苦しめてしまった俺が、彼女にできることなどもう何もないから。
そう……ただ、願うことぐらいしか。