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水蜜桃の願い
第4章 動き出した刻
それなのに。
数日後、彼女から届いた突然のLINEのメッセージ。
『先生ちゃんと話がしたいです』
それを目にした途端、胸が騒いだ。
『時間、ください』
続けての言葉に、スマホを強く握り締める。
一方的に別れを切り出した俺にする話。
それは非難か……それとも──?
……どちらにしろ、もう会うつもりはなかった。
あのとき、これが最後だと決めた。
だから返事はしなかった。
けれど彼女は、何度もメッセージを送ってくる。
電話もかかってきたけれど、そのすべてを俺は無視した。
それで、俺には会うつもりはないと伝わるだろうと思ったのに、彼女は何度も俺に『会いたい』『話がしたい』と送ってくる。
それは、正直意外でもあった。
彼女がそんなふうに自分の気持ちを押し通そうとしてくるなんて思わなかったから。
──ああ、でも。
10年前のあの一度だけの交わりは、彼女の強い感情から、だった。
なら意外でもないのかとそれを思い出しながら、もうLINEはブロックし、電話も着信拒否をしようと考えていた。
そこまでされたら、さすがに彼女も諦めるだろう。
もうそうするしかないと、自分でもよくわかっていた。