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水蜜桃の願い
第4章 動き出した刻
そう──それで、本当に彼女とは終わる。
俺はそれを望んでいるはず。
だから、そうしなければと思うのに──彼女が俺に会いたいと……話がしたいと今だその心を向けてきていることを思えば、決意は揺らぎそうになる。
──だめだ。
また、同じことになる。
曖昧な状態は、彼女を傷つけるだけ。
あらためて自分に言い聞かせ、次のメッセージが……次の電話がきたらそうしようと決めた。
それなのに。
「……マジかよ」
その、最後のはずのメッセージを確認した途端に口から漏れた呟き。
『先生の職場の前で、会ってくれるまで待ってます』
まさかの内容に、彼女がこんなことまでしようとするなんて──そう思い、そしてまた、それほどまでに彼女を追い詰めていた自分に気づいた。
『最後にもう一度だけ話がしたいんです』
俺はスマホを握りしめる。
──どうしたら。
その言葉だけが、頭の中をぐるぐると回っていた。
──俺はどうすればいい。
会わないと決めた。
けれど、彼女は本当にやってくる気がする。
そうしたら、会わざるを得ないだろう。
どんなに俺が避けても、会う羽目になるだろう。