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水蜜桃の願い
第5章 甘やかな願い
「だから……わがままを言わないで、約束を守って──そういう子。
……先生にとって都合のいい子?」
ふっ、と不意にその口角が上がった。
自嘲気味なその笑顔を目にしながら、彼女から渡された言葉の意味を、ただ俺は頭の中でひたすらに探る。
……俺にとっての、都合のいい子?
俺の心を突き刺してきた、その言葉。
ぎこちないのにどこか柔らかな彼女の笑みにさえ、抉られる。
そんな表情でこんなことを口にしてくるその姿から、目が離せない。
──違う。
そんなじゃない。
そんなつもり、なかった。
俺は、彼女がいい子だから好きになったわけじゃない。
違う────。
思うだけの言葉が、俺の内部をぐちゃぐちゃに掻き回していく。
「でも先生は好きになってくれなかったから……だからもうやめたの。
そして決めた。
私は私の気持ちをちゃんと言う、って」
──待てよ。
勝手に俺の気持ちを決めんなって。
好きになってくれなかった?
好きだったって。
もうずっと。
ずっと、透子が。