この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
水蜜桃の願い
第1章 先生と彼女
「……先生」
無意識のうちに呼んでいた。
ん? と、顔を上げて私を見るその人を。
……もっと早く好きだと伝えていたら、選ばれたのは私だったかもしれない。
黙ったまま見つめる私に、どうしたの? と優しく笑う先生。
「先生……」
……私と同い年だというその彼女と付き合う前に、もし私が好きだと伝えていたら、先生は私を選んでくれていたかもしれない。
美波さん――? と、私の名前を口にした先生の表情が戸惑いの色を見せ始めた。
その微妙な変化を感じ取り、私は咄嗟に俯く。
「……っ……」
――好き。
私の心の中は、その言葉だけに支配される。
初めて会ったときからずっと。
ずっと先生に憧れてた。
でも、それを伝えられないでいるうちに、知ってしまった先生の彼女の存在。
ひと月前はまだなかった、その存在。
……私だって。
先生が、好きなのに。
好きだったのに――――……!