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水蜜桃の願い
第5章 甘やかな願い
まだ高校生だった彼女。
幼さと無邪気さを武器に、もっと俺を求めるかもしれないと覚悟していた。
自分の気持ちをもっとわかってほしいと言わんばかりの態度で、俺を欲しがり続けるかも、と。
それなのに、全然だった。
その態度から、俺への想いはまだあると感じるのに。
それでもそれを必死で隠して、前みたいな雰囲気に戻そうと、普通を装って俺に接してきた。
……いつの間にか俺の頭の中に住み始めていた、健気な彼女。
それがもし、彼女曰く『狡さ』だったとしても、そんなこと俺は本当に思ってなかった。
こうやって聞かされた今でも、彼女に対する気持ちなんて変わらなくて。
自分で狡いと思ってしまうようなことをしてでも、俺に振り向いてほしかったというその告白に、よけいに苦しくなる。
「……いい子でいたら先生に好きになってもらえるかもしれない、って……そういうずるい考えも私にはあったよ」
背後で、ぽつりと彼女は呟き出した。
「だからそんな……健気だなんて、そんなこと────」
「たとえそうだったとしても、あのときの俺はそう思ったって話」
もう、自分をそんなふうに責めるような言葉を言わせたくなくて、途中でそうやって遮り、少しだけ振り向いて彼女を見る。
その瞳は揺れているように見えた。
そっと逸らし、また、前を向き直してから続ける。