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水蜜桃の願い
第5章 甘やかな願い
「……最後の日もそう。
約束を守りきってくれた透子ちゃんに何かしてあげたいと思った。
最後なのにわがままひとつ言わないから……だから何が欲しいか聞いたら、ただ忘れないでいてくれればいい、とか。
何それ? そんなんでいいの? って……ほんと何て言うか、どこまでも健気な子に思えて」
容易にそれは、思い出せた。
触れてほしいとねだるどころか、ただ、忘れないでいてほしいと願った彼女。
そんな、言うなれば小さく、他愛もない願い。
それさえも遠慮がちに口にしていた。
「契約が終わったときは正直ほっとした」
そう──やっと。
「透子ちゃんからこれで離れられるって」
これで、もう心を揺らさずに済むと────。
先生……、と彼女が俺を呼ぶ。
いいや、それはただの漏れた言葉だったかもしれない。
けれど俺はその言葉をきっかけにして、振り向いた。
彼女と目を合わせ、続ける。
「言っただろ? 俺は面倒なのが嫌いだって。
その頃にはもう時々セックスする相手がいれば充分だと思ってたから、そういう関係を求めてる子しか相手にしてなかった」