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水蜜桃の願い
第5章 甘やかな願い
そう。
それが、俺だった。
俺はずっとそうやって過ごしてきた。
彼女なんてもういらない。
面倒なだけだった。
そんな関係に縛られるのはもう、うんざりだった。
「……だから、先生と生徒じゃなくなってもこの子はだめだって思った。
俺なんかが手を出していい子じゃないって」
でも、彼女は違う。
その一途さ、健気さ。
その想いに見合うような相手じゃなければ、付き合っていても苦しむだけだから。
俺たちは、住む世界が始めから違っていたから────。
俺の言葉を聞いているであろう彼女は、視線を逸らさないまま、何度も首を振った。
無言のままで。
時折、苦しそうに歪む表情。
何の感情を堪えているのか、口元がわずかに震えた。
それを押さえるかのように下唇を噛み、俺から目を逸らし、微かに俯く。
そして
「……先生はそのあとの10年間、私のこと、時々思い出してくれたりしてた?」
ぽつりと落とされた、呟き。
その、問いかけ。
──思っていたよ、ずっと。
心の中で答えた。
それが、どういう理由でかなんてわかっていなかったけど、よく、思っていた。
ふとしたときに考えるのは、彼女のことだった。