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水蜜桃の願い
第5章 甘やかな願い
些細な言葉も。
くるくると変わる見飽きない表情も。
『女』を見せてきた、あの日のことも。
魅力的な身体も、声も。
あの艶かしい目つきも、すべて────。
再び甦ってくる光景。
ぐっと堪え、答えた。
「まあ……約束したからね」
そんな、素っ気ない言葉を使って。
「……それだけ?」
その返しに少しだけ不満気な色が滲んでいるように思えたのは気のせいだろうか。
「約束がなかったら、私のことなんて何も……?」
俺を見つめ、繰り返す。
「ねえ先生……少しも?」
縋るような言い方。
……やっぱり気のせいじゃない。
そう思っていたら、不意に彼女が俺に近づき始めた。
俺を見つめながら、手を伸ばせばもう届く距離まで来て、立ち止まる。
「先生」
その、願うような瞳。
俺は彼女のその目には、弱いのに。
なら逸らせばいいのに、なぜかできずにただ、そのまま見つめ返していた。
彼女の、肯定してほしいという思いが胸に迫ってくる。