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水蜜桃の願い
第5章  甘やかな願い


……そう。
その、声────。


こみ上げてきた、感情。
ずっとずっと、堪えてきた。
本心を隠したまま接した数か月。
そのまま明らかにすることなどないと思っていたのに。

彼女の言動が。
先生、と俺を何度も呼ぶその声が。


……止められない。
感情の揺らぎが止まらない。


彼女の手をぐいっと引き、そのまま壁に背中もろとも押しつけた。


「痛っ……」


まるで片手だけ貼りつけるかのように。


「……せん、せ……」


その瞳には怯えにも似た色。
それをじっと見つめ


「そんなに知りたい? 俺の事」


そう、告げた。


繰り返してきた言動。
それでもまだ、彼女は俺が好きだと言う。
あんなにひどいことをしてきた俺に想いを告げてくる。

自分だけが好きだと思い込んでいるその言葉。


……違う。
俺だって、ずっと好きだったのに。
好きだからこそ、離れたのに。

なのにこの子は何もわかっていない────。


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