この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
水蜜桃の願い
第5章 甘やかな願い
……そう。
その、声────。
こみ上げてきた、感情。
ずっとずっと、堪えてきた。
本心を隠したまま接した数か月。
そのまま明らかにすることなどないと思っていたのに。
彼女の言動が。
先生、と俺を何度も呼ぶその声が。
……止められない。
感情の揺らぎが止まらない。
彼女の手をぐいっと引き、そのまま壁に背中もろとも押しつけた。
「痛っ……」
まるで片手だけ貼りつけるかのように。
「……せん、せ……」
その瞳には怯えにも似た色。
それをじっと見つめ
「そんなに知りたい? 俺の事」
そう、告げた。
繰り返してきた言動。
それでもまだ、彼女は俺が好きだと言う。
あんなにひどいことをしてきた俺に想いを告げてくる。
自分だけが好きだと思い込んでいるその言葉。
……違う。
俺だって、ずっと好きだったのに。
好きだからこそ、離れたのに。
なのにこの子は何もわかっていない────。