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第5章 　甘やかな願い

……当然だ。
そんなことちゃんとわかってる。
気づかれないように隠し続けていたのは自分だ。

なのになぜ、そう思われていることが面白くないのか。


彼女の発する、自分だけが苦しいんだと言わんばかりの言葉。
黙っていればいい。
そのとおりだと、態度で示せばいい。


わかっている。
わかっているんだ────。


「だったらもう全部答えてあげるよ。
……俺に何が聞きたいの」


けれど想いとは裏腹に、そんな言葉が口をついて出る。
なぜ黙っていられないんだと、自分を責めているもうひとりの自分がいる。


「何が知りたいの」


彼女から離れなければと思うのに。
秘めたままだったこの感情をすべて、もう──そうも考えてしまっていた。


俺はいったいどうしたいのか。
もう、自分でもわからなくなっている。
こんな俺は俺じゃないと思いながら、けれど彼女だけがいつも俺を揺らし、自分でさえも知らなかった俺をあらわにさせていたという記憶。

ならば、やはりもう隠し通すのは無理なのかと半ば諦めに似た気持ちで。

……そしてまた、望みとも言えるような、感覚で。