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水蜜桃の願い
第5章 甘やかな願い
「……まさか再会するとは思わなかったよ」
抑えきれない衝動のままに、告げた。
あのときの、衝撃を。
「10年前──俺は透子ちゃんと離れてほっとしたはずなのに。
なぜかそのとき……また会えた、そう思った」
思い出しながら、ひとつひとつ口にする。
彼女は、俺の言葉を黙って、俺を見つめたまま聞いていた。
……そうだろう。
だって俺は今まで、自分の気持ちをこんなふうに言うことなんてなかったのだから。
「そして、知りたくなった」
え……? と、続きを促す戸惑いの聞き返し。
だから俺は、答えた。
「透子ちゃんは俺との再会をどう思ってるのか。
俺と同じ気持ちなのか、それとも違うのか」
知りたかったその答えを求めるために、彼女を試したのだと。
「……っ……だから先生、私の番号は聞かなかったの?」
聡明な彼女はすぐにその意味に気づく。
どうして、と思わず零したかのような言葉を言い直し
「どうして知りたかったの?
……私が先生と同じ気持ちだってわかったらどうするつもりだったの?」
そう、さらに問いかけてくる。
俺から目を逸らさないまま。
俺の言葉を一言一句逃したくないとでもいったような。
その雰囲気にのまれそうになるぐらいの、静かな強さ。