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水蜜桃の願い
第5章 甘やかな願い
「私から連絡があったら……どうしようと思ってたの?」
……どうしよう、と思ってたかだって?
そんなことは、わからない。
ただ、知りたかった。
それだけだった。
「……わからない」
溜め息と共に口にすればまた、彼女は意味がわからないといったような表情を向けてくる。
──わからない。
ほんとに、そうだったんだって。
すべての感情を説明できるわけじゃない。
自分にだってよくわからない気持ちがある。
それは、彼女を前にすると頻繁に俺に訪れる。
だから────。
「だからわかるまで会ってみようと思った」
「先生……」
「何で俺は、あのときそう思ったのか。
俺はこれからどうしたいのか」
話しているあいだ中、真っ直ぐに俺を見続ける彼女の視線に苦しさを覚え、咄嗟に逸らした。
掴んだままの彼女の手首。
本当に細いな……と、そんなことを考えた。
「……それで?」
静かににおとされた、彼女の言葉。
つられるように、それで……と俺は繰り返し、そのまま続きを口にする。
「会い始めたらすぐに、透子ちゃんの言動から感じた」
彼女に視線を戻せば、微かに傾げられているその首。
何を……? と、その目が訴えていた。
だから俺は、答えた。
10年前と同じものを、と。