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水蜜桃の願い
第5章  甘やかな願い


相変わらずその目は俺を見ている。
なのに落ち着かずに揺れる瞳。
何を思っているのか、考えているのか……俺にはわからなかったけど、理不尽なことを言われているに違いないのに逃げようともしない彼女に、俺はそのまま続けた。


「少しずつ、って本当はそう思ってたけど……送ったLINEの返事、苛ついた」


俺のことが好きだとあんなに態度に出しておいて


「さっきの奴とまだ一緒にいる、って何それ。
あんなあからさまな態度されてたら自分に好意があるってことぐらいもうわかってるだろうに。
……俺が好きなくせに何やってんの、って」


男とまだ一緒だと話してきた彼女に、それは俺に気にしてもらいたいがための計算なのかと思ったりもした。

彼女はただ、素直なだけで。
聞かれたから事実を答えただけに違いなくて。
わかってはいたけど、そんなふうに考えてしまうほどに平常心ではいられなくなっていた自分。


……そう、彼女はいつも。
こんなふうに、俺を惑わせてばかりで。

10年前も、あのときも、今も────。



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