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水蜜桃の願い
第5章  甘やかな願い


ゆっくりと目を開き、そっと合わせた視線。


「……なら、どうして?」


彼女はその場所から動こうとせずに、俺に問いかけてきた。


「どうしてずっと身体の関係を続けたの」


当然……と言ってもいい質問だった。


数か月。
抱くだけのために彼女と会った。
俺の思いなど知らない彼女は、セックスの相手として扱われるだけの自分の立場をどう思っているだろう?
何度も考えたそのことに、さっきの彼女の答えを思い出し、また胸が苦しくなった。

あの頃の俺は、ただ──早く嫌気がさせばいいと。
もう俺なんかやめればいいと……そんなことばかり、考えていたのに。


「……俺を嫌いになればいいと思ったから」


え? と目で問いかけてくる彼女に


「透子ちゃんがセックスだけの関係を望んでないことぐらいわかってたから。
だからわざとそれだけを続けた。
俺に失望して、もう俺から離れればいいと思った──そういうことだよ」


そう答えながら、ああ……この言い方は誤解されるかもしれないと気づいた。

彼女の想いが迷惑だから、嫌われたかったわけじゃない。
意味としては、むしろその反対だった。

それを説明すれば、彼女を遠ざけようとした言動の意味がなくなってしまう──頭の中でそう、ストッパーが働く。
けれどそれよりも今はもうただ、誤解されたくないという気持ちの方が勝っていた。

思いのままに口が開く。
そんな自分に自分でも戸惑っているはずなのに、なぜか言葉はするりとこぼれていく。


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