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水蜜桃の願い
第1章 先生と彼女
「さっきも言ったけど……俺には付き合ってる人がいるから」
先生のそれは、即答。
「だから、無理です」
その、躊躇いのない言い切り。
……わかっていたことだった。
そんな答えは、最初から。
彼女がいる以上、私の想いはもう、迷惑なだけだってことぐらい。
でも。
まだ。
「……でも、もし……その人と付き合う前に、好きって言ってたら」
諦めきれない想いが、そんな言葉になって出る。
静かに、視線を上げた。
先生と目が合う。
間違いなくいつもの先生なはずなのに、その顔に笑顔が浮かんでいないだけで、どこか違う人のようにも見えてくる。
そんな真面目な表情で私を見る先生を見ながら、続けた。
「そしたら先生は私と付き合ってくれましたか」
タイミングだけの問題だったんですか?
それだけで私の想いは叶わないものになってしまったんですか?
先生の目が少しだけ、細められた。
私を見つめたままの、その目が。
「もっと早く、ちゃんと好きって言ってたら……そしたら先生は――――」
「ごめん」
不意に遮られた、言葉。
「ごめんね美波さん」
先生は小さく溜め息をついて
「それは……ないです」
はっきりと、そう口にした。