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水蜜桃の願い
第5章 甘やかな願い
「……あの日、透子ちゃんが泣いたの見て、ああもうほんとに終わらせないとだめだって、やっと決められた。
透子ちゃんから離れていくまでこのままでいられたら……なんて、俺の勝手でずるずると関係を続けてる場合じゃないな、って。
身勝手な俺に幻滅して今度こそ俺を嫌いになるように、一方的に切って、連絡も絶った」
彼女は口を挟まず、黙って聞いてくれていた。
沈黙のあいだに、俺の身体に回している腕に力を込めてくる。
胸元に乗せてきた頭をすりすりと甘えるようにしてくるそのくすぐったさに、感じていた緊張は少しだけ和らいだ。
彼女の行動に促されるように、腕を下ろし、また言葉を続ける。
「なのに、今日のあの透子ちゃんだよ。
自分の気持ちをあんなふうに激しく口にして……驚いたし、戸惑った」
あんな態度を取った俺に。
それでも告げてきた、強い想い。
彼女の強さに、なぜか感動すら覚えたことを。
「だって……先生に私の気持ち、どうしてもわかってほしかったから……」
ぽつり、と────。
そんなふうに今日のことを思い出していたとき、どこか甘えるように彼女は呟いた。