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第5章 　甘やかな願い

……彼女の気持ち。
その、心の底から絞り出されたような願いは、俺の頭に──心の中に深く刻み込まれている。


「── "ちゃんと私を欲しがって”」


あの、強い言葉が。

その一言に、すべては込められていた。
言われた瞬間のことは今も忘れられない。


「……あの言葉はきたね。正直、ぞくっとした」


あれは──と言いかけながらもそこで言葉を切り、やだ……と呟いて恥ずかしそうに俺の胸に顔を埋める。
あのときの彼女と同じはずなのに、その仕草からはとてもそうとは思えない。
この、可愛さ。
それもまた、愛しい。


「どうして？　あの言葉で俺は完全にやられたのに」


この子の秘めているものは、ふだんからは想像できないほど、強い。
そう……俺のすべてを、変えてしまうほどに。
纏わりついていたぐちゃぐちゃとした思考を、一瞬にして取っ払われてしまったほどに。


え……？　と、そっと顔を上げた彼女と目が合った。
咄嗟に逸らされたものの、またすぐに躊躇いがちに合わせてきて、そのままじっと見つめてくる。