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水蜜桃の願い
第1章  先生と彼女


恋愛対象にすらなれなかった私。
先生への想いが叶った彼女。
……何が違うというのだろう。


先生は少し、考えるような素振りを見せた。
そうして、口にしたのは――――。


「理由も何も。
……ただ、俺の方が彼女を」


――え?


「先生の方が……?」


好きだったの?
え……彼女じゃなく、先生の方が?


「……あ、じゃあ……先生が告白したってこと?」


言われた言葉の意味を確認するかのように、問いかける。

私の方を向いていながらも、視線は私を捕らえてはいない先生の口元に浮かんだのは、やっぱりあの静かな笑み。

肯定も、否定もなく。
ただ、そうやって先生は。


……私が先生を想っていたあいだ。
先生はその人を想っていたんだ。
私の存在なんて入り込む隙間もないほど、きっとずっと、そうだったんだ。
そんな相手と、先生はいま、想いを通じ合わせている――――。


――ぎりっ、と思わず噛んだ下唇。


「……わかりました」


もう、その笑みを見ていたくなくて。
私はその言葉を口にすると、そのまま立ち上がった。



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