この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
水蜜桃の願い
第1章 先生と彼女
恋愛対象にすらなれなかった私。
先生への想いが叶った彼女。
……何が違うというのだろう。
先生は少し、考えるような素振りを見せた。
そうして、口にしたのは――――。
「理由も何も。
……ただ、俺の方が彼女を」
――え?
「先生の方が……?」
好きだったの?
え……彼女じゃなく、先生の方が?
「……あ、じゃあ……先生が告白したってこと?」
言われた言葉の意味を確認するかのように、問いかける。
私の方を向いていながらも、視線は私を捕らえてはいない先生の口元に浮かんだのは、やっぱりあの静かな笑み。
肯定も、否定もなく。
ただ、そうやって先生は。
……私が先生を想っていたあいだ。
先生はその人を想っていたんだ。
私の存在なんて入り込む隙間もないほど、きっとずっと、そうだったんだ。
そんな相手と、先生はいま、想いを通じ合わせている――――。
――ぎりっ、と思わず噛んだ下唇。
「……わかりました」
もう、その笑みを見ていたくなくて。
私はその言葉を口にすると、そのまま立ち上がった。