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水蜜桃の願い
第5章 甘やかな願い
「……そんなのいいよ、先生……」
その、包み込むような優しい口調はやはり涙混じりのように思えたけれど。
「私、先生が私と始めてくれるってだけで……もうそれだけで……」
その、健気な言葉にまた胸をぎゅっと掴まれた俺は、自分でも抑えきれない衝動のままに彼女を抱き締めた。
どんなに強くそうしても足りない気がした。
俺を抱き締め返してくる彼女の両腕。
しがみつくようなその必死さに、また、彼女への想いが止めどなく沸き上がる。
「……好きだよ、透子が」
意図せずこぼれた言葉は、俺の本当の心。
そう──ずっと前から好きだった。
好きだったんだ。この子だけが。
う……と、聞こえた呻き声の直後
「……っ、せんせ……っ……!」
両腕にさらに力を込めながら俺を呼ぶ彼女の、涙に彩られた声。
わあっと声をあげて子供のように泣くその姿に、俺はどれだけこの子を待たせてしまったんだろう──そんなことを思った。