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水蜜桃の願い
第5章 甘やかな願い
正直に言って構わないんだろうか?
それとも誤魔化した方がいいんだろうか──判断がつかず、それを聞いてしまった。
「え? ……違うんだ?」
それだけで理解したかのように、途端にそう返される。
やっぱり、苦笑するしかできない。
「じゃあ最初からそういうのが面倒だったわけじゃないんだね……」
独り言のように小さく呟いた彼女は、もう俺からは目を逸らしている。
繋いだ手を見つめながら、力を入れたり緩めたりしているその姿。
「……告られて、まあいいかなって思ってOKしたことはあるよ」
昔のことだし、彼女が知りたいというなら、話すぐらい何でもないことだった。
過去にひとりだけいた、そう呼んでいた存在。
それが、その子とのはじまりだった。
「じゃあいつから面倒になっちゃったの?」
すぐに、続けて聞かれる。
いつから……なんて、そのときからで。
あれ以来、付き合うという関係を積極的に考えることができなくなったことを思い出す。
左手に持ったままだったビールをぐいっと飲み干し、テーブルに置いた缶。
彼女もその隣に缶を置き、今度は自由になった右手も左手に重ねるようにして俺に触れてきた。