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水蜜桃の願い
第5章 甘やかな願い
「だからきっと、私、またそういうふうになるかもしれないし、そしたら先生……私のこと面倒って」
たどたどしい言い方で紡がれていくのは、自分を責めるような、不安そうな、そんな内容。
胸がぎゅっと苦しくなる。
違う。そんなことあるわけない。
面倒だなんて思うわけがない。
ないんだ────。
急に沸き上がってきたその衝動を抑えるつもりなどなかった。
重ねられ、絡まっていた指先を解くようにして手を引いた。
自由になった両手で触れた、彼女の身体。
抱き締めた、柔らかさと香り。
ああ……と、たまらず漏れた息。
「思わないよ」
そして、言葉。
「思わないから……そんなこと」
もう一度繰り返した。
その意味を、わかってほしくて。
そして同時に、彼女の言葉は俺が言わせたものだということも理解していた。
その不安は、俺のせいなのだと。
「ごめん──俺がひどく振り回したせいで」
彼女は首を振って否定する。
どこまでも優しいそのすべて。
けれど今はそれにさえも苦しくなる。
ただその身体を抱き締め、柔らかな髪を撫で、そんなことしかできない自分に苛立ちまで感じたときだった。