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水蜜桃の願い
第5章 甘やかな願い
思わず、抱き締め返す。
腕の中で彼女はずっと言ってくれていた。
嬉しいと。
俺が大好きだと。
……何度も。
その度に、胸が熱くなる。
この子の声が、言葉が、じわりと心に……頭に染み入っていく。
──無性に、名を呼ばれたいと思った。
彼女の綺麗な声で、自分の名前を。
その願いを口にすると、俺の首にしがみつくようにして耳に寄せてきた唇。
甘ったるく音を引きずるような囁きで、忍……とすぐに応えてくれた。
自分の名前を彼女が口にした──言葉にすればただそれだけのありふれたことなのに、実際それを耳にしたときの俺の気持ちはきっと誰にもわからないだろう。
それほどまでに、たまらなく。
彼女のことが、愛しく。
どんなに抱き締めても足りないぐらい、好きだという想いだけがひたすらに沸き上がってくる。
もっと。
……もっと、聞きたい。
再び願う。
彼女は叶えてくれる。
何度も俺の名前を呼んでくれる。
『先生』と呼ばれるのも好きだったけど──と、素直に口にし、少し火照っている彼女の頬を撫でた。