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水蜜桃の願い
第1章 先生と彼女
「私……誰にも言いませんし」
そんな先生を見ながら、まるで挑発するような言葉を私は繰り返す。
自分の言葉に追い立てられていくような感覚に、それは、止まらなくなる。
「それともやっぱり、彼女に悪いとか?」
そして、その言葉を口にした直後だった。
「……っていうか」
私から目線を逸らし、黙って話を聞いていた先生の口がようやく開いた。
何を言われるんだろう――そう思った次の瞬間
「他の子に興味ないから」
そう、低い声で告げられて。
私に向けて、というよりも、独り言の呟きのようにも聞こえる、その言葉。
どきり、と心臓が跳ねた。
どくどくと、そのまま鼓動が速まる。
だって先生のそんな声を聞いたのは初めてだったから。
そして先生の視線が、すっと私を捕らえた。
そうして、無表情のまま
「ただ、それだけです」
そう……抑揚のない声で告げられる。
「お疲れ様でした」
そして続けられたその言葉のあと、きゅっ、と結ばれたその唇の口角が、ほんの少し上げられる。
けれど目は笑っていなかった。