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水蜜桃の願い
第1章  先生と彼女


自分の言葉が先生をそんな態度にさせたのに、実際見せられると、心臓の動悸が半端なくなった。
どうしよう、なんて言葉まで頭に浮かぶくらいだった。


「――――っ……!」


咄嗟に、頭を下げていた。
そのまま、ごめんなさい、と呟く。
嘘です、って。
そう……何度も。


「……うん、もういいから」


やがて先生のその、さっきより柔らかな声が降ってきて。
そろそろと頭を上げれば、やっぱりさっきよりは穏やかな先生の表情があって。

もう何も口にできないまま、私はただ、もう一度頭を下げる。
それから――教室を出た。

そのまま早歩きで、施設からも、出る。
何度も通った駐車場までの道。俯いたままでも歩けた。
幸い、誰とすれ違うこともなく、そこにたどり着く。

車の運転席じゃなく、後部座席に乗り込んだ。
だってここなら、外から見られることもなく思いっきり泣けるから。

ドアを閉め、はあ……と大きく、深い息を吐く。
途端に、う……と、噛みしめた唇から呻きが漏れた。



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