この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
水蜜桃の願い
第1章 先生と彼女
自分の言葉が先生をそんな態度にさせたのに、実際見せられると、心臓の動悸が半端なくなった。
どうしよう、なんて言葉まで頭に浮かぶくらいだった。
「――――っ……!」
咄嗟に、頭を下げていた。
そのまま、ごめんなさい、と呟く。
嘘です、って。
そう……何度も。
「……うん、もういいから」
やがて先生のその、さっきより柔らかな声が降ってきて。
そろそろと頭を上げれば、やっぱりさっきよりは穏やかな先生の表情があって。
もう何も口にできないまま、私はただ、もう一度頭を下げる。
それから――教室を出た。
そのまま早歩きで、施設からも、出る。
何度も通った駐車場までの道。俯いたままでも歩けた。
幸い、誰とすれ違うこともなく、そこにたどり着く。
車の運転席じゃなく、後部座席に乗り込んだ。
だってここなら、外から見られることもなく思いっきり泣けるから。
ドアを閉め、はあ……と大きく、深い息を吐く。
途端に、う……と、噛みしめた唇から呻きが漏れた。