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水蜜桃の願い
第5章 甘やかな願い
……10年前のあの出来事。
そこから始まった、透子との関係。
長いその回想は、ようやく今へと──彼女と身体だけじゃなく心も結ばれている『今』へと辿り着く。
本当にいろいろなことがあったな、と隣にいる彼女の寝顔を見つめながらあらためて思った。
「透子────……」
呟く、その名前。
俺の大好きな音。
口にするだけで、たまらなくなる。
付き合い始めてから、数か月。
彼女への気持ちは何ら変わることなく──それどころかさらに深くなっていくのを自覚する日々。
生徒からの思いがけない告白をきっかけに、透子の想いをまたひとつ、知った。
そうしてどんどん俺は彼女を覚えていく。
その心も、考えも、もっと教えてほしいと思う。
彼女のことを何でも知りたい。
知るほどに、彼女への愛しさが増すばかりだから。
その、揺れる想いさえもすべて、聞かせてほしい。
そんなことを考えながら寝顔を見つめていたら、沸き上がってきた衝動。
すっ、と指を伸ばし、滑らかな頬を指先で静かに撫でる。
すうすうと、俺に寄り添うように無防備に眠るその姿にさえ、こんなにも充たされる────。