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水蜜桃の願い
第1章 先生と彼女
だから。
次のレッスンの途中、私は先生に英語で質問した。
先生のことを。いろいろと聞いた。
先生は、これもレッスンのひとつだと思ってくれたのだろう。やはり英語で普通に答えてくれた。
不思議なことに、日本語で聞くよりも、緊張せずにそれを聞ける気がした。
『先生、その後彼女はできました?』
……恋人の有無を。
そう、会話の流れでさらりと。
一瞬、言葉に詰まったかのようになった先生にどきりとする。
けれどそれはわずかな時間のことで、すぐにその顔に浮かぶ、苦笑い。
私の問いを否定し、反対に同じことを聞かれ、どきんと波打った心臓を必死で宥めるようにしながら、私もです、と返した。
先生は大袈裟に溜め息をつき、お互い頑張らないとだね、と白い歯を見せて、爽やかに笑った。
――それが、ひと月前のことだった。