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水蜜桃の願い
第2章 先生と生徒
隣のテーブルに座っていた中年の女性たちのわいわいとした大きめの話し声が一瞬途切れ、その隙間に入り込んできた、女性の声。
今ってショートボブの子、多いよね──そんな言葉が、私のすぐ後ろの方から。
え? と、意識が一気にそこにいく。
それは私の髪型がまさしくそうだったから。
思わず、目だけでそっと回りをうかがう。
……確かに、視界に入るだけでもふたりほど、そんな髪型の女性がいる。
でも────。
「数で言ったらロングの人の方が多くない?」
また後ろから聞こえてきた女性の声。
会話の内容から、さっきとは違う人だろう。
心のなかで、だよね、と頷く。
けれどその人の言葉はそこで終わらなかった。
「美波の場合、先生の彼女がショートボブだったからよけいにそういう人が目に入るってだけだと思うよ」
それを耳にした瞬間──どくん、と心臓が、跳ねた。
……え?
頭の中で、何度もその言葉がぐるぐると回る。
先生。
彼女がショートボブ。
……なに? まさか忍先生と私のこと、じゃないよね?