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水蜜桃の願い
第2章 先生と生徒
──あ。
先に会計を終えたのだろう、出入り口に向かう、ゆるふわの人のその横顔。
とても可愛らしい顔立ちをしているように見えたけれど、すぐに俯き手の中のスマホを確認し始めたその動作に、また顔が見えなくなってしまった。
もうひとりの女性を振り返り、何か言葉をかけている。
そして手を振り、そのまま少し急いだ様子で店から出て行った。
ずっと振り返ったままの自分に、はっとして、顔を前に戻す。
……あのひとが、みなみ、さん……?
『整理ついた?』
『先生に会っても大丈夫?』
『ちゃんと諦めました』
そんな、さっきのふたりの会話が私の頭の中で何度も何度も繰り返される。
……あの人たちが言ってる『先生』が、忍先生のことだってまだ決まったわけじゃない────。
そう思おうとするけれど。
『でも』
『もし』
そんなふうに、勝手に考えはエスカレートしていく。
さっきまでのうきうきとした気分がまるで夢だったかのように、今は、もやもやとした不安ばかりが胸の中を渦巻いている。
……可愛い人、だった。
ちらりと見えた、その横顔。
雰囲気に合っている、ふわふわとした柔らかそうな髪────。