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水蜜桃の願い
第2章 先生と生徒
深く俯けば、サイドの髪が流れてきて視界に入った。
思わず、さわってしまう。
……あの人、やっぱり先生の生徒なのかな。
ううん、と心の中でそれを打ち消す。
まだ決まったわけじゃないんだから、と。
そう──あの人が『先生』を好きってことは間違いないかもしれないけど。
それが忍先生って決まったわけじゃない。
何度もそう繰り返す私の頭の中。
ここのすぐ近くの何かの教室に通っている、らしいけど。
7時半からのレッスン、らしいけど。
先生の彼女はショートボブ、らしいけど────。
ああ、だめ。
私は唇をぎゅっと噛んだ。
考えれば考えるほど、やっぱりどうしてもあの人と忍先生が結びついてしまう。
今さらながら、気づかされた。
先生にはたくさんの生徒がいる。
生徒は男の人だけじゃないはず。
きれいな女の人だって……あの人みたいな生徒だっているに違いないし、マンツーマンのレッスンもあるって言ってた。
もしかしたら、先生を好きになる生徒だっているかもしれない──あの人のように。