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水蜜桃の願い
第2章 先生と生徒
そうして────。
『仕事終わったよ。
じゃあこっちまで来られる?』
やがて入ってきた先生からのメッセージに、すぐ行きます、と返事を返し、慌ただしく店を出た。
先生の勤めるその英会話教室までの道を俯き加減で早足で歩いていると
「透子」
不意に名前を呼ばれ、弾かれたように顔を上げれば、視界に入った先生の姿。
途中まで迎えに来てくれたんだろう。
「先生……」
思わず口から出たその呼び名。
ん? と、その目が少し細められる。
「どうしたの?」
「……え?」
「泣きそうな顔してるけど」
そう言いながら、さらに私のもとに近づいてきた先生は、伸ばしてきた手で私の頬を優しく撫でる。
……先生────。
その手に触れながら、首を振った。
「早く会いたかったから」
そう口にして、笑顔を作る。
先生はその答えに納得したのかしなかったのか、曖昧な表情をして。
それでも、そう、と呟いた。