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水蜜桃の願い
第2章  先生と生徒


「行こう」


促され、頷いた私は先生の斜め後ろを歩く。
すぐに先生は私に手を差し出してくれたけど、でも、何だかそれじゃ足りなくて。
私の中の何かに追いたてられるかのようにその腕を取り、まるでしがみつくようにして先生に身体を寄せた。


「……何かあった?」


また聞かれて、俯いたまま私は首を振る。
先生のぬくもりを、そのにおいを感じながら


「早く帰ろ?」


そう呟いて、腕を引く。
今度は反対に私が先生を促すかたちになった。

駐車場までの短い距離。
無言で歩きながら、私は思っていた。


先生を、もっと感じたい。
先生のすべてを、私の心と身体で感じたい。
そうして、この不安な気持ちを消してしまいたい。
先生に、消してほしい────。


その気持ちは、車に乗ってからも消えなかった。
むしろ、すぐ隣にいるのにふれられないというその状態が、よけいにその思いに拍車をかけていた。

どうしようもない焦燥感は先生を見ればいっそうまたひどくなる。
だから私はずっと窓の外を眺めていた。
ううん、眺めている振りをしていた。

……早く、先生の家に行きたかった。




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