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水蜜桃の願い
第2章 先生と生徒
そっとその広い背中にふれれば、ん? と声で返してくれる。
そのまま、こつん、とその背中に額を寄せた。
途端に強くなる、先生のにおい。
さっきからの私の胸中を渦巻く感情を加速させていく。
好き──そう思えば思うほど。その香りを感じれば感じるほど、先生を誰にも取られたくないって。先生は私だけのものなんだからって。そんな感情が強くなっていく。
「透子?」
先生が、冷蔵庫のドアを閉めながら振り向こうとする気配。
でも、上げたくなかった顔をその背中に寄せたまま、先生のシャツを両手でぎゅっと握った。
「……やっぱり、何かあった?」
呟くように口にした先生。
どう答えたらいいかわからない。
それに、私の中のこのもやもやするものをなんとか言葉にできたとしても、返ってくる返事を思うと──やっぱりこわい。
だからどうしたらいいかわからないまま、ただ、黙って首を振った直後──少し強引に先生が振り向いた。
反動で離れてしまった私の身体。
その腕が取られ、引っ張られる。
気づけば私は先生に抱き締められていた。