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水蜜桃の願い
第2章 先生と生徒
「透子」
少し強めに私の名を呼ばれ、深く吐いた息。
黙ったままでいるのはもう無理だと思った。
先生の反応はやっぱりこわい。
……でも、このままこうしていることもきっともう無理な気がした。
そもそも、本当に言いたくないなら、先生にばれないようにいつも通りふるまえばよかったのに。
こんなふうに態度に出してしまったのは、気にしてほしいという気持ちがあったからなんだと思う。
気にしてほしいくせに、いざとなったら言うのがこわいとか……そんなずるい自分に呆れる。
呆れるけど──いつも通りふるまおうとしてもふるまえただろうか、と……こんなに頭のなかがぐちゃぐちゃなのに平静を装えただろうか、と考えればやっぱりそれも無理だった気がする。
自分を否定したいのか肯定したいのか──何だかもう、それさえもわからなくなってきた私は、頬に感じる先生の手にすがるように自分の手を重ねた。
「……先生」
呟きに、ん? と返してくる先生。
甘くて、優しいその声色。
たまらずに深く息を漏らすと同時に、あのね……とあの人の名前を口にする準備をする。