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水蜜桃の願い
第2章 先生と生徒
「俺が何だって?」
……でもその返しに、少し言葉がつまってしまった。
だって、先生が何、っていうより──私が知っているのは、あの人はきっと先生のことが好きだというそれだけ。
でもそれって、私が口にしていいの?
もし、先生が知らなかったら?
先生に言うつもりもなく、諦めようとしているんだとしたら?
「……っ、その」
うまく説明できなくなった私は、必死に言葉を探す。
どこまで口にしていいんだろう。
自分の不安を打ち消したいがために発する言葉。それはいったいどこまで許されるの────?
「……おいで」
不意に先生が動いた。
黙ったままの私の腕を引き、リビングへと歩き出す。
導かれるままにソファーへと座らされ、左隣に先生も腰を下ろした。
手が、そっと握られる。
私は重なっている先生と自分の手を、ただ黙って見つめた。
「いつ聞いたの?」
そして静かにそう問われた私は、さっき、と呟く。
「……あのお店で。
その人たち私の後ろの席だったから、話してる内容が聞こえてきて……」
「ああ、それで」
こくん、と頷いた私の手。
先生と繋がっているその手に、ぎゅっと力が込められた。