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水蜜桃の願い
第2章  先生と生徒


「……っ」


先生の唇が動く。
私の指先に、わざと押し付けるようにしてくる。


……ああ。


背筋を、ぞわりとしたものが駆け抜ける。
呼吸が浅くなるのがわかる。
射ぬくような視線は、そんな私の状態をきっともう見抜いてるはずだった。


この視線が、私以外の誰かに注がれたら。
この唇が、私じゃない誰かの顔に……唇に……身体に、ふれたら。


「……いや」


心の……頭の中だけで呟いたはずだった。
けれど急に細められた先生の目に、口から出てしまっていたのだと気づく。


「私以外の人にさわらないで」


そのまま、言葉はこぼれた。
そう──堰を切ったかのように、もう止まらずに。ううん、止められずに。


「さわらないよ」


先生が即答してくれる。


「言っただろ? ちゃんと断ったって」

「でも────!」


ごくり、と唾を飲み込んで、もしも──と、その不安を続ける。


「もしもだけど……私と同じようなことする人がいたら?」

「え?」

「あのときの私みたいに誰かが、一度だけでいいから、って先生に迫ったら────?」



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