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最後の一色
第12章 15日目・・・そして夜

食事の後、リビングで酒を飲んでいる夫の前に和紙の封筒を差し出した。
今日半月分の給料をもらえた、とほほ笑む妻に、夫はさほど心を動かさす中身を確認した。
中に入っていたのは15万円。その金額には眉を動かした。
「半月でこんなにもらえたのか?お手伝いの仕事にこんなに払えるなんて」
眉間に皺を寄せた夫の頭の中ではその金額に引っかかるものがある、妻はすぐに察し、
「いただいた交通費や残業代も含まれているの。
それに休みなしで毎日来てくれたからって、少し余分をくださったのよ」
とっさについた嘘にしては上出来だ。
唇も震えず目も泳がず、もっともらしく説明した。
「そうか・・」
康文はそれ以上、封筒の中身について何かを言う事はなかった。
もう一杯、とロックグラスを差し出す夫の心の中がもうすこし、
透明だったらいいのに。
なにを考えどう思っているのか伝えてくれればいいのに。
黙ってグラスを受け取りながら
夫の手だけを見つめていた。

