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最後の一色
第15章 20日目・・2人での休日
映画のようなシーンだった。
夜景を見下ろす高層階のレストランで、
目の前に突き出した小さな箱をそっと開けた。
中には、今まで眼にしたどんなきらめきよりも美しく輝く
ダイヤの指輪が入っていた。
嬉しさと戸惑いに目を潤ませる私に、結婚しよう、と囁いた。
あの時のやわらかな瞳は誠実そのものだった。
経済的ゆとりがある事を前面に押し出すような事も言わず、
とにかく私を愛している、一生大事にする、そう繰り返す彼に
首を縦に振って気持ちを返した。
あれからもう13年になる。
これだけの年月を共にすれば、互いに新鮮さを感じなくなるのは
どこの夫婦も同じだろう。
子どもがいなければ夫婦2人で仲良く暮らす。
そんな夫婦なんていくらでもいる。
別に私たちだけが寂しい思いを抱えて生きているわけじゃない。
けど、やっぱり私たちには足りないものがある、と時々下を向いてしまったりする。
聞かれてもいないのに美紗緒は、
なぜ子供がいないのかを話し出した。