この作品は18歳未満閲覧禁止です

- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
最後の一色
第16章 21日目・・湧き上がる欲望

ガウンを脱ぐ時、美紗緒はわざと涼輔の眼を見続けた。
決して視線を逸らすことなくガウンをするりと脱ぎ捨てる。
この裸をあなたの腕に落として。
言葉にせず目の力だけで訴えかける。
迫ってくるような強い目。
落されそうになる。
だが今はまだダメなんだ、と跳ね返す事を止めない涼輔。
今までにないくらいの緊張した空気が重くのしかかる。
ポーズをとってもまだ、自分を見つめているモデルに近づき、
目の高さを合わせると、子供をあやすように髪を撫でた。
「美紗緒さん・・僕の気持ちを解って・・」
それだけ言うと涼輔は、一言も話さず、ひたすら筆を動かし続けた。
そんな涼輔の気持ちを察するように、軒下に止まったミンミンゼミが
勢いよく鳴いている。
女の苛立ちと男の我慢。
それぞれの息遣いを隠すかのように、蝉の声は大きくなった。

