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最後の一色
第16章 21日目・・湧き上がる欲望


ガウンを脱ぐ時、美紗緒はわざと涼輔の眼を見続けた。

決して視線を逸らすことなくガウンをするりと脱ぎ捨てる。
この裸をあなたの腕に落として。

言葉にせず目の力だけで訴えかける。
迫ってくるような強い目。
落されそうになる。
だが今はまだダメなんだ、と跳ね返す事を止めない涼輔。

今までにないくらいの緊張した空気が重くのしかかる。

ポーズをとってもまだ、自分を見つめているモデルに近づき、
目の高さを合わせると、子供をあやすように髪を撫でた。

「美紗緒さん・・僕の気持ちを解って・・」

それだけ言うと涼輔は、一言も話さず、ひたすら筆を動かし続けた。


そんな涼輔の気持ちを察するように、軒下に止まったミンミンゼミが
勢いよく鳴いている。

女の苛立ちと男の我慢。

それぞれの息遣いを隠すかのように、蝉の声は大きくなった。



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