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最後の一色
第17章 25日目は夜まで・・
「毎日こうして晩御飯食べられたら幸せだろうな」
アトリエの、いつもはポーズをとる美紗緒のためのソファに並んで座り、
アイスティーを飲みながら、ガラス越しに見える暗がりの中のハーブを眺めた。
時にゆっくりと、時に大きく風に吹かれるハーブの陰で鳴く虫たちは、
2人に沈黙を与えないように絶え間なく声をあげる。
涼輔は、美紗緒という女を好きになったという事だけで心を満たしていた。
人妻だとわかっている。
自分のものにできないこともわかっている。
それでもこの女を好きでいる気持ちが、筆を軽やかに進ませ、
いやでもこの顔に笑顔を作らせる。
心の満足感。
それだけで生きていることが幸せだと感じられる。
だがあくまでもそれは、自分だけの、自分の中だけのこと。
あの時もそうだった。
恋人と心通わせ愛し合っているだけで幸せだった。
紙切れ一枚で約束された結婚という名の型枠なんて、あってもなくてもかまわなかった。
でも彼女にとってそれは、不確かな愛としか受け取ってもらえなかった。
いや・・彼女だけじゃない。
たぶん、多くの女性が同じように思うのかもしれない。
きっと、美紗緒さんも・・